2018年08月6日
一般的に70歳以降になると、医療費が増える傾向にあります。これは年齢を重ねるにつれて少しずつ悪くなる箇所が現れ、医療機関を受診する機会が増えるためでしょう。ここで注目したいのは、残っている歯が多いほうが、生涯医療費を抑えることができることです。これはいったいどういうことでしょうか。
残存歯とは?
残存歯とは、その名のとおりご自身の歯が残っている本数です。
歯の根っこが存在することで1本とみなすため、神経を取った被せ物の歯もカウントします。インプラントの場合は人工歯根のため、1本とカウントしません。
ブリッジの場合は、支台歯を1本ずつと数え、ポンティック部分(歯のない部分のダミーの歯)はカウントせず残存歯とみなされません。
70歳以降が医療費の大半を占める傾向に
若い頃は健康体だった人が、年齢を重ねるにつれて高血圧や糖尿病などの生活習慣病や、腰痛、ひざ痛などの体の痛み、目が悪くなって見えにくいなど、色々な症状を訴えることが多くなってきます。病院の待合室では「若い頃は風邪をひいても寝たら治ったのに、最近では病院通いばかり」という会話を耳にすることも多いでしょう。
生涯医療費のうち半分は70歳まで、残りの半分は70歳以降に必要となる、という報告もされています。
年齢を重ねると、どうしても体の各機能が衰えてしまうことは否めません。そのために医療機関へかかる機会も増えてしまうことが、生涯医療費にも関わってくるのでしょう。
高齢になると増えるのが歯周病
お口の中はどうでしょうか。
年齢を重ねるにつれて罹患しやすいお口のトラブルは、歯周病です。高齢になると、虫歯よりも歯周病にかかる可能性がグッと高くなり、それに比例して歯を失う可能性も非常に高くなってしまいます。
歯周病は30代のころから始まり、そのままにしておくと自覚症状をあまり感じないまま悪化してしまいます。はじめの頃は歯ぐきの腫れや出血だけだったのが、悪化すると口臭がきつくなる、歯を支える歯槽骨が吸収されて歯ぐきが下がり歯が長くなる、歯が揺れ動くなどの症状が出始めます。
さらに悪化すると歯ぐきに膿が溜まり、痛くて噛めない、さらに歯が動いてグラグラになる、口臭がひどくなるなどの症状が出て、最終的に歯が抜け落ちるか抜歯となり、歯を失ってしまいます。
残存歯が多いことで得るメリットとは
歯周病を防ぐことで、歯を多く残すことが可能になります。では残存歯が多いことでどのようなメリットがあるのでしょうか。
・よく噛んで食べることができる
よく噛んで食べることは消化を助け、体の健康を維持できます。
・脳を活性化し、認知症の予防になる
入れ歯では噛む機能は回復できても、しっかり噛むことが難しいうえ、だんだん合わなくなってきて噛み辛くなり、脳の活性化にも影響が出てしまいます。自分の歯でしっかり噛んで食べることは認知症の予防にも繋がります。
・嚥下機能の維持
しっかり噛んで食べることは嚥下機能を鍛え、誤嚥性肺炎を防ぎます。
合わない入れ歯で食事を続けていると、噛み辛く食事が行いにくいことから入れ歯を外し、歯ぐきで物を噛むようになって嚥下機能に影響が出てしまうことも少なくありません。その結果しっかり噛めずに誤嚥の恐れが出てしまいます。
残存歯は体を守る大きな砦
残存歯が少ないことは体の健康に悪影響を与え、医療機関の受診増えるきっかけとなります。特に歯周病は残存歯だけでなく、糖尿病や脳梗塞など体の健康にも大きく関わるため、歯周病からお口の健康を守ることが、結果的に生涯医療費を抑えることに繋がると考えられるでしょう。
大切な歯を残すためにも、定期検診を欠かさず受診するようにして下さい。
2018年08月3日
歯を失ってしまい、入れ歯を作製した方はその入れ歯を快適に使うこと、そして長持ちさせることをお考えになるのではないでしょうか。入れ歯本体を清潔に使うことはもちろんですが、入れ歯を長持ちさせるためには残っている歯を大切にすることが長持ちの秘訣です。そこで今回は、入れ歯と残存歯について考えてみました。
なぜ入れ歯になってしまったのか?
入れ歯を作製するということは、何らかの原因で歯を失い、噛む機能を回復させるためです。歯を失った理由は主に虫歯、歯周病で、その他事故などアクシデントにより歯を失うことがあります。
事故など不運なアクシデントは別として、虫歯や重度の歯周病で歯を残すことができなくなったことが理由の場合、厳しいことを言うようですが「自己管理の甘さ」が関わるのではないでしょうか。
虫歯の兆候が見られても、痛みもあまりないし、緊急性も感じられないからと受診を先延ばしにした結果、歯は全部溶けて根っこだけになってしまったというケースは少なくありません。
特に歯周病の場合、歯ぐきの腫れや出血があり、歯周病の症状であることは明らかな場合は早めに歯周病対策を行う必要があります。ところが何らかの理由で歯科医院を受診しないと症状が悪化し、気が付いたら歯が抜けてしまう危険性が高くなります。
どちらのケースも、早めに歯科医院を受診していれば歯を失うことはなかったかもしれません。まずはなぜ歯を失ったのかを考え、今後のお口の中の健康に役立てるようにしたいものです。
入れ歯を長持ちさせるためには
部分入れ歯は歯にクラスプという金具を引っかけて使用します。入れ歯でもしっかり噛んで食事するためには、入れ歯が精巧に作製されていることと、残存歯の状態が良いことが条件となります。特にバネをかける歯は噛むたびに負担がかかり、徐々にダメージを受けるため他の健康な歯に比べると歯の寿命は変わってくる可能性があります。
バネをかける歯が虫歯になってしまうと歯を削って治療を行うことになるため、歯が脆くなってしまいます。
また歯を失った理由が歯周病の場合、お口全体に歯周病の症状が現れる傾向が強いため、バネをかける歯の歯ぐきにも炎症を起こしている可能性があります。歯周病が進行すると歯を支える歯槽骨が吸収されて、歯が揺れ動き始めます。こうなってしまうと噛んだときに痛みを感じたり、入れ歯が浮き上がった感じがするなどの不具合が出てきます。
入れ歯の調整だけではしっかり噛むことができなくなってくるため、最終的に入れ歯を作り替えることになりかねません。
このように残っている歯にトラブルが起きると、結果的に入れ歯が合わなくなってしまうのです。
残っている歯を大切にすることがポイント
入れ歯を長持ちさせるためには、残っている歯を大切にすることが最も大きなポイントです。せっかく作製した入れ歯を快適に長く使用するためにも、しっかりとメンテナンスを受けて、ご自身の歯を健康に保つことが大切です。
2018年08月2日
歯が溶ける病気と聞くと、まずほとんどの人は虫歯を思い浮かべるでしょう。しかし、虫歯以外にも歯が溶ける病気があることをご存知でしょうか。今回は虫歯ではないのに歯が溶ける「酸蝕症」についてお話を進めていきます。
「酸蝕症」とはどんな病気?
酸蝕症とは、酸性の食べ物や飲み物、胃液により歯が溶ける病気です。ここ最近急に増えてきたと言われています。
虫歯との違いについて
虫歯は、虫歯菌が作り出す酸によって歯が溶ける病気です。これに対し、同じ歯が溶ける病気でも、酸蝕症は口の外から入ってくる酸や胃酸など体の内部からの酸によって歯が溶ける病気です。
虫歯は、プラーク中に棲みついた虫歯菌が酸を作り出し、やがて歯を溶かし始めます。この状態を脱灰といい、虫歯の一歩手前の状態です。脱灰が進むとやがて虫歯へと進行してしまいます。
また虫歯の場合、磨き残しがある歯に起こりますが、酸蝕症は口の中全体に酸が広がるため広範囲にわたり歯が溶けることが特徴です。
また虫歯のように穴があいて黒くなるわけではなく、痛みもあまり感じないため気づきにくいという性質があります。
酸蝕症の原因について
酸蝕症は、酸を多く含む飲食物や胃液によって歯が溶けてしまいます。その原因は生活習慣や食生活にあると考えられます。
若い年代ではスポーツ飲料や清涼飲料水を多量に摂取することで酸蝕症を引き起こしやすくなります。
また過度なダイエットや拒食症、過食嘔吐など摂食障害も酸蝕症を引き起こす要因になります。
中年層は健康志向が強く、酢やワインなどを摂取することが多くなりがちです。酢やワインは酸を多く含んでいるため、非常に酸蝕症になりやすい飲食物です。
高齢者になると、胃食道逆流症が増加しやすくなります。胃食道逆流症とは、胃酸を多く含む内容物が食道内に逆流する症状で胸焼けや嘔吐などが起きやすく、歯を溶かす原因となります。
酸蝕症になりやすい飲食物とは
酸を多く含む飲食物はたくさんありますが、特に注意すべきものは、清涼飲料水やスポーツドリンクでしょう。これらはクエン酸を多く含んでおり、長期間にわたって摂取することで歯が溶けてしまう原因になります。またワインも酸性度が強く、多量に摂取すると酸蝕症を引き起こすリスクが高まります。
またレモンは酸を多く含んでいます。ビタミンCが豊富で体にはとても良いのですが、歯にはあまり良い影響を与えません。
酸蝕症の症状と治療について
酸蝕症は歯の表面のエナメル質が溶けて薄くなります。そのため象牙質が露出し、冷たいものなどが滲みやすくなるなど、知覚過敏の症状が現れます。
歯全体が薄くなり、色は象牙質が透けるため黄色っぽく見え、見た目にも変化が起こります。また前歯など、歯の先端が擦り減ったようになることも特徴です。
酸蝕症の治療は、知覚過敏の薬を塗る、虫歯治療で使われるレジンを使って溶けた部分を充填する方法が一般的です。
また欠損部分が大きい場合、セラミッククラウンやラミネートべニアなど被せ物による治療が必要になる場合もあります。
酸蝕症にならないよう、日ごろから注意が必要
酸蝕症の原因は、飲食物の摂り方や生活習慣です。酸を多く含む飲食物を多量に摂らない、またちびちびと長時間にわたって飲むことも、歯が溶ける原因になるため控えるようにしましょう。
また胃液は非常に酸性が強いため、嘔吐を起こさないよう生活習慣にも気を付けなければいけません。
虫歯ではないのに歯が擦り減っている、知覚過敏の症状がある場合は、早めに歯科医院で診てもらうようにして下さい。
2018年08月1日
子どもの歯のトラブルと言えば、何といってもまず虫歯です。虫歯は砂糖をたくさん摂取しすぎることで虫歯リスクが高まります。さらに砂糖の過剰摂取は虫歯だけでなく、子どもの性格にも大きく影響すると言われているようですが、それはどういうことでしょうか。
虫歯のお話と併せながら、今回は砂糖が子どもに与える影響について考えてみました。
砂糖と歯の関係とは?
まず、歯と砂糖の関連性について考えてみましょう。
小さい頃、「甘いものを食べ過ぎると虫歯になる」とよく言われませんでしたか?
甘いもの=虫歯というイメージがあるかもしれませんが、甘いもの全てが虫歯の原因になるわけではありません。虫歯の原因となる甘いものは「砂糖」なのです。同じ甘いものでも、キシリトールは虫歯になりません。
虫歯になる原因は、虫歯菌が出す酸であり、酸が作られる原因はプラークです。プラークはネバネバとした白い物質で、主に歯と歯ぐきの境目に付着する細菌の塊です。お口の中には非常に多くの細菌が棲みついており、歯の間などに残った食べかすの中にある糖分を栄養源としてプラークを作り出します。そして虫歯の原因となるミュータンス菌(代表的な虫歯菌)などがプラークの中に棲みついて酸を出し、歯を溶かして虫歯をつくるのです。
特に乳歯はエナメル質が弱く未熟なため、とても虫歯になりやすい歯です。
ケーキやジュース、アメなど砂糖を使ったお菓子はとても美味しく、子どもにとっては大好物でしょう。しかし砂糖を多量に含んだお菓子などは虫歯リスクが非常に高いため、歯にとって大敵であると言えます。
砂糖と性格の関係とは?
では砂糖を摂取しすぎることで、子どもの性格に影響が出るというのはどういうことでしょうか。
砂糖は体のエネルギーの源となりますが、文部科学省が公開しているデータベースによると、上白糖100ミリグラムの中にビタミン類と食物繊維は全く含まれておらず、ナトリウムとカルシウム、カリウムがごくわずか含まれているだけで、体の健康を司るミネラル分やビタミン類はほとんど含まれていません。
また砂糖は消化吸収が早いため、血糖値が急上昇します。血糖値をコントロールするのはインシュリンというホルモンですが、急激に上昇した血糖値のためにインシュリンが大量に分泌されることで、今度は血糖値が一気に下がり、低血糖となります。
低血糖になってしまうと今度はエネルギー不足になり、脳に影響が出て、ボーっとするなど集中力が欠けてしまうなどの症状が現れます。この低血糖を改善するために、今度は脳がアドレナリンというホルモンを分泌させますが、このアドレナリンが分泌されると、神経が高揚する状態を引き起こします。その結果「キレる」という言動に表れてしまうと考えられているようです。
砂糖の過剰摂取は子どもの健康に大きく影響する
砂糖を過剰摂取することで虫歯だけでなく、低血糖を引き起こし、さらにアドレナリンが分泌されて気分の高まりや攻撃性が見られることから、子どもの性格にも影響が出る可能性があることをお話しました。砂糖を使った甘いものは子どもの大好物。でも虫歯や体の健康を考えてダラダラ与えるのをやめ、時間と回数を決めて摂取させるように心がけましょう。