歯みがきのタイミングでベストな時間とその理由について
2018年06月13日
虫歯や歯肉炎のない健康なお口の中を保つ基本は、毎日の歯磨きです。口元の健康や美意識が高まり、オフィスや外出先で歯磨きを行う方も多いことでしょう。ところで歯磨きに最も効果的なタイミングとはいったいいつでしょうか。
今回は、歯磨きのタイミングについて考えてみました。
「食後すぐの歯磨きはダメ」というのは本当?
昔は「食べたらすぐに歯を磨きなさい」と言われたものです。そのため食後すぐに歯磨きを行う人ももちろん多いことでしょう。
しかし口元の健康が注目される中、「食後すぐに歯を磨いてはいけない」という説を耳にするようになってきました。これはいったいどういうことでしょうか。実はこれは専門家の間でも意見が分かれるところでもあります。
私たちの口の中は、飲食をするたび酸性に傾きます。歯の表面はエナメル質で覆われていますが、エナメル質は酸に溶けやすいという性質があります。飲食後そのままにしておくと汚れがプラーク化し、細菌が増殖して歯を溶かし、やがて虫歯に進行してしまいます。
そのため飲食後はできるだけ早く歯磨きを行ったほうがいいというのが一般論です。
これは虫歯や歯肉炎、口臭予防としてもっとも基本的な考え方でしょう。
ではなぜ「食後すぐの歯磨きはNG」なのでしょうか。
それは飲食後のエナメル質は酸によって柔らかくなっており、研磨剤を含んだ歯ブラシでブラッシングすることで歯の表面を傷つけてしまうからです。
そしてもうひとつは、唾液です。唾液には溶けだしたエナメル質を修復するミネラル成分などが豊富に含まれています。歯の表面が溶けることを「脱灰」、溶けてしまったエナメル質の修復を「再石灰化」と言います。飲食後の酸性状態のお口の中を、唾液が中和して再石灰するまでに約30分かかると言われています。
ところが食後すぐに歯磨きをすると、エナメル質を修復するはずの唾液まで水と一緒に吐き出してしまうため、再石灰化が行われにくくなってしまうことから「食後すぐに歯を磨いてはいけない」と言われています。
特に虫歯でないのに歯の表面を覆うエナメル質が溶けだしてしまう「酸蝕症」という症状がある人は、食後すぐの歯磨き習慣でますます歯が擦り減ってしまう恐れがあるようです。
ただ酸蝕症は虫歯のような自覚症状がほとんどないため、酸蝕症かどうかは歯科医師の判断によります。
また炭酸飲料を飲んだ後もエナメル質が一時的に柔らかくなり、歯の表面が傷つきやすくなっています。酸蝕症の人や炭酸飲料を摂取した直後は、水で口の中をゆすぐ程度にとどめておくのがよいでしょう。
歯を磨くベストタイミングとは?
ではいったいどのタイミングで歯を磨くのが最も良いのでしょうか。
それは食後よりも、起床後すぐと就寝前です。もちろん食後の歯磨きは歯の健康面やエチケット面で大切ですが、虫歯や歯周病を予防するためには起床後と就寝前の歯磨きが大変重要なのです。
就寝中は唾液分泌量が減り、口腔内が乾燥気味になるため、起床後の口腔内の細菌が最も多い状態になっています。そのまま歯を磨かずに食事をすると、体内に細菌を取り込んでしまうことになるのです。
このように就寝中は、先に述べた理由で虫歯リスクが最も高まります。寝ている間に細菌が増殖し、虫歯や歯周病の進行を促してしまうため、就寝前にしっかりと歯磨きを行い、細菌の数を減らしておくことが大切です。
タイミングだけでなく、正しく汚れを落とすことが大切
歯磨きのベストタイミングについてお話しました。大切なことは、細菌を増やさずプラークコントロールをしっかりと行うことです。そのためにはタイミングも大切ですが、汚れをきちんと落とすことが基本です。また歯ブラシだけでなく、デンタルフロスや歯間ブラシを使い、歯のすき間の汚れを取り除くことも正しいオーラルケアを行う上で必要です。
歯を磨いただけで、実際はちゃんと磨けていないかもしれません。いちど普段の歯磨きを見つめなおし、歯科医院で定期的なメンテナンスを受けながら歯の健康を守るようにしましょう。